シェイクスピア四大悲劇のあらすじ&特徴まとめ
シェイクスピアの四大悲劇とは
1600年代に活躍した、イギリスの天才劇作家ウィリアム・シェイクスピア。
彼が残した膨大な作品のうち、四大悲劇とされているのが、次の4つの戯曲(舞台演劇用に書かれた脚本・文学作品)です。
- ハムレット
- オセロ
- リア王
- マクベス
日本でも知らない人はいないシェイクスピアですが、なんだか高尚で難しそうなイメージから、読みたくても手が出なかった人もいるかもしれませんね。
ここでは、シェイクスピア四大悲劇のあらすじと特徴を紹介します。
どの作品から読めばいいか迷っている人も、自分好みの作品を選ぶ参考にしてみてください。
四大悲劇のあらすじ
シェイクスピアの戯曲は、その内容と発表時期から歴史劇、喜劇、悲劇、問題劇、ロマンス劇の5つに分類されています。
「悲劇」の特徴は、主人公が悩み葛藤した末、非業の死を遂げてしまうこと。
四大悲劇の4作品も、主人公が復讐劇や愛憎劇に巻き込まれた結果、最後はみな死を迎えます。
それではここからは、四大悲劇それぞれの詳しいあらすじを見ていきましょう。
ハムレットのあらすじ
ハムレットは、叔父に父王を殺された王子ハムレットの復讐劇です。
主人公のハムレットは、デンマークの王子。
ある日、父王が急死し、叔父のクローディアスが王位を継承、ハムレットの母である王妃は、新王となった叔父と再婚します。
繊細な気質のハムレットは突然の父の死から立ち直れず、母の早すぎる再婚によって女性不信にも陥り、死を考えるほど深く思い詰めていました。
そんな時、城壁に現れた父王の亡霊から、父の死が叔父クローディアスによる毒殺だったことを告げられ、ハムレットは復讐を誓います。
時に狂人を演じ、時に恋人のオフィーリアを遠ざけながら、復讐の機会を計るハムレット。
しかし、誤って叔父ではなく宰相のポローニアスを殺してしまい、ポローニアスの娘であったオフィーリアも、発狂の末に水死。
父と妹を失ったポローニアスの息子レアティーズは、ハムレットを恨み、叔父クローディアスと共謀してハムレットへの復讐を計画します。
クローディアスとレアティーズは、試合に見せかけてハムレットを殺してしまおうと、罠の剣術試合を開催。
毒の剣と毒の酒を用意して試合に臨みましたが、観戦中に誤ってその酒を飲んだ王妃が死亡、レアティーズとハムレットは双方が毒の剣による傷を負います。
毒の回ったレアティーズは、この試合がクローディアスの企みであったことを告発して絶命。
真相を知ったハムレットは逆上し、クローディアスに毒の酒を飲ませ、毒の剣で刺し殺して、ついに復讐を果たしました。
しかし、自らもレアティーズの刃による毒で倒れ、最後は親友ホレイショーに真実を語り継ぐように頼んで息絶えます。
オセローのあらすじ
オセローは、黒人将軍オセローが妻デズデモーナの浮気を疑い、最後には潔白な妻を自ら殺してしまう愛憎悲劇。
肌の黒いムーア人のオセローは、美しい白人女性、デズデモーナと駆け落ち同然で結婚します。
優秀な軍人だったオセローにはイアーゴとキャシオという2人の部下がいましたが、キャシオを副官に取り立てたことで、選ばれなかったイアーゴの恨みを買ってしまいました。
イアーゴはオセローを陥れるために、キャシオとデズデモーナが浮気しているという嘘をオセローに密告。
最初は信じなかったオセローですが、イアーゴの巧みな誘導により浮気が事実だと思い込み、最後には潔白を訴えるデズデモーナの言葉も耳に入らず、彼女を殺してしまいます。
しかし、イアーゴの妻エミリアの告白により、すべてが露見。
妻の死と、イアーゴの裏切りに絶望したオセローは、自分はデズデモーナを愛しすぎたのだと言いながら命を絶ち、妻の後を追うのでした。
リア王のあらすじ
リア王は、年老いたリア王が信じていた娘に裏切られ、信じるべき人たちを信じられず、非業の死を遂げる悲劇です。
ブリテン国王のリア王は、老齢のために退位し、3人の娘に領土を分割して与えようと考えました。
リア王は娘たちの愛情を試すため、娘たちがどれほど父を大切に思っているかを語るよう問いただします。
上の姉2人は言葉巧みに父王に取り入って領土を得ますが、おべっかの言えない末娘のコーディリアは率直な物言いでリア王を怒らせ、勘当されてしまいました。
リア王は姉2人に領土を譲り、それぞれの領土を行き来して老後を過ごしていましたが、2人の娘は間もなく本性を表し、リア王を冷遇。
娘たちに裏切られた怒りと、コーディリアを勘当してしまったことへの後悔からリア王は正気を失い、狂気のうちに荒野をさまよいます。
一方、勘当されイングランドを追われたコーディリアは、フランス王と結婚してフランス王妃となっていました。
リア王の危機を知ったコーディリアは王に嘆願してフランス軍をブリテンに進軍させるも、姉2人が率いるイングランド軍に敗北。
王と再会はできたものの、共に囚われの身になり、コーディリアは殺されてしまいます。
最後まで父に誠実であったコーディリアの亡骸を抱えたリア王が慟哭し、絶命して物語は終了します。
マクベスのあらすじ
マクベスは、王位を簒奪した男マクベスが悲惨な最後を迎えるまでを描いた物語。
将軍マクベスは3人の魔女に出会い、自分が王になるという予言を受けます。
野心を駆り立てられたマクベスは、ダンカン王を暗殺してスコットランド王になりました。
マクベスに予言をした3人の魔女は、マクベスが王になること以外に「マクベスの友人、バンクォー将軍の子孫が王になる」「女の股から生まれたものはマクベスを殺せない」とも予言しました。
予言を怖れたマクベスはバンクォーを殺してしまいますが、心の安寧を得ることはできず、徐々に疑心と狂気に取り憑かれ、暴君と化していきます。
マクベスの暴政により妻子を殺された貴族マクダフは、イングランドに身を寄せ、ダンカン王の息子マルカム王子と共に、マクベスへの復讐を企てます。
マクベスを打倒すべくイングランド軍がマクベスの城へ迫りますが、マクベスは女の股から生まれた者は自分を殺せないという予言を信じていました。
しかし、マクダフと対峙し、「私は母の腹を破って(帝王切開で)生まれてきた」というマクダフに敗北。
マクダフは復讐を遂げ、ダンカン王子が新たなスコットランド王となって終劇します。
以上が、四大悲劇のあらすじです。
気になる作品は見つかったでしょうか…?
四大悲劇はそれぞれに違った魅力のある作品ですが、いきなり4つとも読むのは、なかなか大変。
次は、どれから読んでみようかと迷っている人へ、四大悲劇それぞれの特徴と、どんな人におすすめの作品かを紹介していきます。
四大悲劇、最初に読むならおすすめは?
ハムレットの特徴
主人公ハムレット王子の葛藤を描いた悲劇「ハムレット」。
ハムレットは、良く言えば繊細、悪く言えばネガディブな性格の人間です。
母親の再婚を見て、女性とはそう簡単に心変わりするものかと女性不信になる、叔父の差し金ではないかと疑心暗鬼になって愛する女性オフィーリアを突き放す、そうかと思えば誰よりも彼女を愛していたと泣き崩れる…
などなど、劇中ではハムレットの心の動揺が、何度となく描かれます。
何事も思い詰め、感情の振れ幅の大きいハムレットの行動は、あまり細かいことを気にしないタイプの人にとっては感情移入しにくいかもしれません。
反対に、周囲の出来事ひとつひとつに深く思い悩むハムレットに、多少なりとも自分が重なる部分がある人には、ハムレットは多くの共感とヒントに満ちた作品であるはずです。
また、ハムレットは名言の宝庫。
例えば次の2つは、シェイクスピアに詳しくなくとも、一度は聞いたことがあるでしょう。
Frailty, thy name is woman. 弱き者よ、汝の名は女。
To be or not to be, that is the question. 生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ。
他にも様々な名言にあふれ、かつそれらの言葉に多様な解釈が可能であることから、シェイクスピアの作品の中でも、最も多く研究されているハムレット。
シェイクスピア入門の最初の一冊として読むのにおすすめです。
オセローの特徴
オセローと聞くと、ボードゲームのオセロを思い出す人が多いでしょうが、それもそのはず、あのオセロの名前の由来は、この戯曲!
オセロ開発者の長谷川吾郎氏は、「黒人の将軍・オセロと白人の妻・デスデモーナを中心に敵味方がめまぐるしく寝返るというストーリーに、黒白の石がひっくり返りながら形勢が次々変わっていくゲーム性をなぞらえた。」と語っています。
長谷川氏が語ったように、オセローは男女が織りなす疑惑と裏切りの物語。
昼ドラやメロドラマ風のドロドロした展開で、四大悲劇の中では1番わかりやすく、エンターテインメント性も強いストーリーです。
難解なストーリーの解釈に思索をめぐらせるより、映画を見るようにストーリーを楽しみたいという人、シェイクスピアというと、どうも難しいイメージがあるという人は、オセローから読んでみてはいかがでしょうか。
リア王の特徴
シェイクスピア作品の中でも、特に壮大な構成とされているのがリア王です。
話の軸は、老いて傲慢になり、真実を見抜く目を失ったリア王と、最後まで父に誠実であった末娘コーディリアですが、実際の劇中では、王と臣下、夫と妻との人間関係、イギリスとフランスを巻き込んでの政略や戦争などの複雑な人間関係や政治事情までもが描かれています。
その点で、リア王は歴史好きや、多数の登場人物が織りなす群像劇が好きな人におすすめです。
リア王は登場人物の大半が死に、最後はリア王もコーディリアも死んでしまうという、四大悲劇の中でも最も救いのない物語でもあります。
あまりの救いのなさに、19世紀末までは、結末を変えた別バージョンが上演されていたほど。
どうせ悲劇を読むのなら、底の底までどっぷり悲劇に浸りたい!という人にも、リア王がいいかもしれません。
マクベスの特徴
マクベスは、野心を抱いた将軍マクベスが王位簒奪するも、最後は復讐に敗れる物語。
シェイクスピアの悲劇は、登場人物が理不尽な死に方をする作品も少なくありませんが、マクベスは、非道な行いをしたマクベスが、その報いを受ける形で死にます。
四大悲劇の中では、最も納得感のあるラストと言えるでしょう。
四大悲劇の中では短編で、展開もスピーディなので、シェイクスピアの悲劇がどんなものか、とりあえず読んでみたいという人におすすめです。
以上、四大悲劇の特徴を紹介しました。
これを読んでみようという作品が決まったら、次は本を選ぶわけですが…
シェイクスピアは、同じタイトルの作品がたくさんの出版社・翻訳者から出されているので、いったいどれを選べばいいか迷ってしまうかもしれません。
おすすめの翻訳版についても、簡単に紹介しておきます。
シェイクスピアを読むのにおすすめの翻訳は?
シェイクスピアの作品は、たくさんの翻訳バージョンがありますが、本としての面白さ、読みやすさの2点において、これからシェイクスピアを読むのにおすすめの翻訳版を紹介します。
福田恒存版 新潮文庫
1950年代に劇作家・演出家としても活躍した、福田恒存氏の翻訳によるシェイクスピアシリーズ。
劇作家ならではの表現力、格調高くも読みやすい翻訳に定評があります。
古典としてのクラシックな雰囲気や、日本語としての美しさを堪能したい人におすすめです。
松岡和子版 ちくま文庫
著名なシェイクスピア翻訳の中で最も新しいのが、ちくま文庫から出版されている松岡和子氏の翻訳版。
すらすら読める明快で切れ味の良い翻訳で、シェイクスピア入門には最適です。
英語原文の解説も豊富なので、いずれ原文にもチャレンジしてみたい人、英語で読もうとしたが挫折してしまったという人にもおすすめ。
福田氏、松岡氏とも、四大悲劇すべての翻訳はもちろん、シェイクスピアのほぼ全作品の翻訳を手がけています。
気に入った翻訳者でシェイクスピアを読破したり、読み比べて好みの翻訳を見つけるのも、日本ならではのシェイクスピアの楽しみ方かもしれませんね。
シェイクスピアの四大悲劇まとめ
最後に、シェイクスピアの四大悲劇のあらすじと特徴のポイントをまとめておきます。
- ハムレット … ハムレット王子の復讐劇。有名な名言がたくさん登場
- オセロー … 黒人将軍オセローが妻の浮気疑惑に囚われる、昼ドラ風愛憎劇
- リア王 … 年老いたリア王の凋落を描く、壮大な悲劇
- マクベス … 野心を抱いたマクベスが王位を簒奪し、復讐に倒れるまでの物語
シェイクスピア作品は戯曲であり、本来は舞台で上演することを目的としたもの。
あらすじを知って興味を持ったけれど、本を読むのはちょっとなあ…という人は、まず映像から入ってみるという手もあります。
四大悲劇はいずれも、舞台のDVDや映画版もたくさん出ているので、気になる人は映像版もチェックしてみてくださいね。