金縛りの原因を徹底解剖!あの心霊現象はすべて、医学的に説明できる
金縛りの原因は幽霊か生理現象か、真相はどっち…?
眠っている時、突然に体が動かなくなる金縛り。
「脳が起きているのに体が寝ている状態」という説明が広く知られていますが…
体の上に何かが乗っていたり、耳元で声が聞こえたりすることもあり、実際に金縛りを体験すると、心霊現象としか思えない恐怖がありますよね。
金縛りで体が動かないのはなぜか?
幻聴や幻聴は心霊現象ではないのか?
金縛りの原因を、医学的な見地から解説します。
目次
金縛りは医学用語では「睡眠麻痺」
金縛りは、医学用語では「睡眠麻痺」と呼ばれます。
冒頭でも述べたとおり、体が眠っているのに脳だけが起きているため、意識はあるのに体を動かせないのが睡眠麻痺の状態。
金縛りにあっている時は、体を動かすように脳が命令を送っても、それらの信号は眼球と呼吸筋を除いて、脊髄で遮断されます。
だから、目だけは動かせますが、体の他の部分を自分の意思で動かすことはできません。
さて、ここまでの説明は一般的に知られているので、一度聞いたことのある人も多いでしょう。
でも、体が眠って脳が起きている、というだけでは、体に誰かが乗っているような重さや幻聴などの恐怖体験をどう説明するのか、いまひとつ納得できませんよね。
ここからは、もう一歩踏み込んで、金縛りの幻聴や幻覚、体に感じる重さの正体は何なのか、さらなる原因に迫っていきましょう。
金縛りの原因、レム睡眠とは?
眠りには、レム睡眠とノンレム睡眠の2種類があります。
簡単に言うと、レム睡眠は体の睡眠、ノンレム睡眠は脳の睡眠。
別々にしなくても、脳も体も全部一緒に眠ればいいのに、と思ってしまいますが、これにはちゃんと理由があります。
レム睡眠中、脳は活発に動き、夢を見ながら記憶の整理をしています。
この時、夢の中で体験しているのと同じように体を動かしてしまうと危ないですよね。
飛んだり走ったり、寝相が悪いどころの騒ぎではありません。
だから、脳が記憶の整理をしているレム睡眠中は、体を動かせないように眠らせておくのです。
脳は動いているが、体は眠っている…これはまさに金縛りの状態そのもの。
そう、金縛りとはレム睡眠状態のことであり、医学的に見れば、金縛りの時の私たちは眠って夢を見ている状態です。
実際に金縛りを体験した身にとっては、あれは本当は寝ているんだと言われても信じられないですけれどね(^_^;)
医学的には眠っているのに、金縛りの当事者は起きているようにしか感じられない。
なぜそんなことが起こるのでしょうか?
通常のレム睡眠と金縛りの違い
金縛りは、脳が起きていて体が眠っている状態、レム睡眠の一種。
でも、金縛りの時のレム睡眠は通常のレム睡眠とは違い、2つの特殊な特徴を持っています。
- 覚醒時から、直接レム睡眠に入る
- 脳の活動状態が覚醒時に近い
1つ目の違いは、レム睡眠が表れるタイミング。
通常、レム睡眠は入眠直後には出現せず、私たちの意識が眠った後、入眠から1~2時間後に出現します。
それが眠ってすぐ、いきなりレム睡眠に突入するのが金縛りです。
2つ目は脳の活動状況。
通常、レム睡眠が表れる時には私たちの意識はもう夢の中ですが、金縛りの時の脳は、限りなく覚醒時に近い状態にあります。
脳が覚醒時に近いということは、起きている時に感覚が近いということ。
だから、金縛りは医学的には夢を見ているのと同じ状態にありながら、普通の夢よりもずっと現実感の強い体験になるのです。
起きながら夢を見ているような状態、と言ってもいいかもしれません。
その感覚が顕著に表れるのが、金縛り中に起こる幻覚や幻聴です。
金縛り中の幻覚や幻聴は、すべて「夢」
金縛りの最中に人の姿が見えたり、人の声が聞こえることがあります。
私も何度も体験していますが、思わずお経を唱えたくなるような恐怖感に襲われますよね…。
心霊現象としか思えないこれらの現象ですが、その正体は、実は「夢」。
私たちはレム睡眠中に夢を見ますが、金縛りの時は脳が覚醒状態にあるため、夢がより鮮明に、より現実に近い感覚で認識されます。
人の姿が見えるのも、人の声が聞こえるのも、すべては夢の産物。
普段なら眠りの中で、夢として見たり感じたりしているものを、意識のハッキリした状態で感じているに過ぎないのです。
頭の中ではなく、現実世界で夢の映像や音声を再生しているようなもの、と考えるとわかりやすいかもしれません。
金縛りは心霊現象ではないということが、おわかりいただけたでしょうか。
でも、金縛りの時に上から体を押さえつけられたり、お腹に誰かが乗っているような重さを感じる、あれこそは心霊現象では?と思った方…
それも、ちゃんと説明可能なんです。
金縛り中に体に重さを感じる理由
私たちの体には、環境に応じて体温や心拍を自動的にコントロールする神経があり、これを自律神経と呼んでいます。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経は心身を活動状態にする動の神経、副交感神経は心身をリラックスさせる静の神経です。
睡眠中は休息の時間ですから、優位になるのは静の神経である副交感神経。
でも、脳が活動状態にあるレム睡眠中は、例外的に交感神経が優位になります。
しかし、レム睡眠中の交感神経は働きが安定せず、レム睡眠中の心拍数や呼吸は「自律神経系の嵐」と言われるほど乱高下します。
そして、この乱高下が、金縛り中のあの重さに深く関係しているのです。
重さの正体は、自律神経系の嵐に対する脳の反応
呼吸が苦しくなった時、普通は激しい運動をしたという原因が存在しますが、レム睡眠中に起こる呼吸困難には理由はありません。
単に、自律神経の気まぐれによるものです。
自律神経系の嵐により、運動したわけでもないのに乱高下する心拍や呼吸。
ここで、金縛り中でほぼ覚醒状態にある脳は、面白い反応を示します。
呼吸が苦しいのなら、呼吸が苦しくなるための原因がないとおかしい。
そう判断して、なんと自分でその原因を作り出してしまうのです。
そうして表れるのが、重さや誰かに押さえつけられているような感覚。
あの重さは霊ではなく、脳が知覚の整合性を取るために生み出した幻なのです。
金縛りの時に胸やお腹に何かが乗っているという現象は、日本だけではなく世界中のあらゆる文化や国に共通しており、それも、金縛りが生理的な現象であることを裏付けています。
今度こそ、金縛りは心霊現象ではなく、レム睡眠中の脳が引き起こすものだということが、納得できたでしょうか。
でも、心霊現象ではないとわかったとしても、怖いものは怖いですし、できれば何度も体験したくはないですよね。
どんな時に金縛りが起こるのかがわかっていれば、あらかじめ対策することもできるはず…
というわけで、次は、金縛りはどんな時に起こりやすいのかを見ていきましょう。
金縛りになりやすい条件とは?
最も金縛りになりやすいのは仰向け寝
金縛りのなりやすさは、寝る時の姿勢にも関係があり、仰向けで寝た時に最も金縛りになりやすいことがわかっています。
日本人を対象にした調査では、金縛りにあった時の体勢は仰向けが80%と圧倒的。
理由は完全にわかってはいませんが、仰向けで寝ると気道が狭くなり、呼吸がしにくくなることが関係しているのではと推測されています。
仰向けよりも横向きで寝る割合の高い欧米では、仰向けで寝ると夢魔や魔女が来るという伝承もあるんですよ。
仰向けだと金縛りになるという体験は、今も昔も、そして世界中でも共通しているんですね。
心身の疲労や緊張は金縛りを誘発する
金縛りになりやすい条件として、もうひとつ判明しているのは心身の疲労や緊張などのストレス。
金縛りになった人に、金縛りになる前の体調を聞き取りした調査では、次のような回答が上位にあがりました。
- 疲れていた
- 嫌なこと、心配事があった
- 生活が不規則だった
- 寝不足だった
この回答、実際に何度も金縛りになったことのある人ならば、納得できるのではないでしょうか?
私自身、1番金縛りを多く体験していたのは、仕事が忙しく慢性的な疲労と寝不足に陥っていた時でした。
疲れて眠ろうとした瞬間に体が動かなくなり、お腹にのしかかってくる重さと幻聴…
ひどい時は毎日のように金縛りにあっていたので、この部屋には何か憑いているんじゃないかと疑ったこともありましたが、当時勤めていた会社を辞めたらピタリとなくなったので、やはり疲労が原因だったようです(^_^;)
では、ここまでの内容を踏まえて、金縛りの予防策をまとめておきましょう。
金縛りにならないための対策
金縛りにならないためのポイントは次の2つ。
- 仰向きではなく、横向きで寝る
- 心身の疲労やストレスを溜めない
金縛りになりやすい人や、最近疲れているなあ…という時は、試してみてくださいね。
金縛りの原因まとめ
最後に、金縛りの原因についてポイントをおさらいします。
- 金縛りは医学用語では「睡眠麻痺」という
- 睡眠麻痺は、脳が起きているのに体が眠っている、レム睡眠の状態
- 幻覚や幻聴はすべて夢だが、脳が覚醒状態に近いため強い現実感を伴う
- 体に重さを感じるのは、自律神経の乱れに対して脳が整合性を取ろうとして起こる生理現象
- 仰向けに寝ると金縛りになりやすい
- 心身の疲労やストレスがある時も、金縛りになりやすい
金縛り時に起こることは、すべて夢。
にわかには信じられませんが、そうと知っていれば、金縛りにあった時のあの恐怖も少しは和らぐのではないでしょうか。
横向き寝は金縛り予防に即効性があるので、今金縛りに悩まされているという人は、今日からさっそく、横向きで寝てみると安眠できるかもしれませんよ!
参考文献)
「金縛り」の謎を解く(PHP研究所)
驚くほど眠りの質がよくなる 睡眠メソッド100(かんき出版)
今度こそ「快眠」できる12の方法(CCCメディアハウス)
女性のための睡眠バイブル(主婦と生活社)
超「快眠」法(アドレナライズ)
頭・心・体が冴える、仕事リズムのつくり方(インプレス)